トイレ掃除の話 ~ our rest room. ~
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TITLE:
トイレ掃除の話
SUBTITLE:
~ our rest room. ~
Written by 黒猫
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飲食店で働いていた頃の名残だろう。
汚れたトイレを見ると耐えられない。汚れたトイレで用を足すなんて考えたくない。
結果、僕はトイレを掃除するのである。
移動中に訪れたコンビニであろうと。
オフ会の2次会くらいに寄ったカラオケ屋であろうと。
最近恋人と同棲を始めたという友人の家であろうと。
行きつけの吞み屋であろうと。
僕はトイレを掃除する。
結果として、僕がトイレから出るのは(「大」をしてたの?)というレベルに3を掛けたくらいの時間を要する。
なぜといって、僕がこうした「アウェイのトイレ」を借用する場合、かなりの頻度で僕はトイレを掃除しているから。
床が汚れていれば床も、洗面台が汚れていれば洗面台も、掃除しているから。
水、トイレットペーパー、ペーパータオル、ハンディソープ、ラバーカップ、洗浄ブラシ、洗剤。
だいたいこの程度があれば、完璧に綺麗にすることができる。
そしてこれらはだいたい、目に付くところに備え付けられている。
たいていひどく汚れているのは、コンビニとカラオケ、それに呑み屋である。
定期的にトイレ掃除をするスタッフがあまりいないことが多いし、トイレ掃除をしたこともない人間もトイレを利用すると想像する。
正直これを書いて想像を絶しているのだが、世の中にはトイレ掃除なんてしたことがない(汚しても綺麗にするなんて考えもしない)というオトナが、一定数はいるのである。
しかしまぁ、そういう人たちはそういう人たちで、僕にとってはどうでもいい。
トイレ掃除をしたことがあろうとなかろうと、公衆のトイレを掃除する意識のない人が利用し続ける限り、誰かが掃除をするそのときまでトイレは汚くなりつづけるのだ。
そこには思想も、啓蒙も、理想も、観念も、意識も必要ない。
他者を非難する必要も、己の行いを得意になって吹聴する必要もない。
そこにあるのは汚れたトイレと清掃道具、そして自分だ。
密室という小宇宙。
何者の視線も監視も(多分)ないその空間で、己の心と向き合うのである(座禅か)。
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そのようなわけで(どのようなわけで?)僕はトイレを掃除してしまう。
そこにはさまざまな汚れが付着していることが多いのではあるが、実際に掃除をしてみれば「汚したらすぐに落とせば一番ラクだ」という真理に気が付くだろう。
換気扇掃除もそうだし、水回りの排水溝掃除もそうだ。
汚れる前に掃除する。汚れたらすぐ掃除する。
なんと簡単な事実を、僕は無視して生きているのかと、自問自答する。
もちろん、ここだけの話、恥ずかしながらも(ポッ)、正直に言うと、文句を言いながら掃除をしている。
「汚したらすぐに落とせ(真理)」とか、
「なぜ俺が掃除をしなくてはならないのか(そこに汚れたトイレがあるからだ)」とか、
「トイレを汚してそのままで平気だなんて信じられない(と言うほどでもない)」とか。
そして文句を言いながら(ああ、なんて心が狭いのだろう自分は)と思ったりする。
だってしたくないなら掃除などしなければいいのだ。
したくて掃除をしておいて、掃除をしない他人に文句を言っているのは、たいそう滑稽で狭量だとは思わないだろうか。
たしかにたかだか排泄の問題である。
用を足せればそれでいいのだ。
道具の良し悪しなんて関係ない、といえばそのとおりかもしれない。
汚れたトイレだろうと、清潔なトイレだろうと、排泄欲求と排泄行為の前に差はない、という人もいるだろう。
しかし本当にそうだろうか。
不潔で汚れたトイレで用を足すことに、恐怖感や嫌悪感はないだろうか。
清潔なトイレで用を足すとき、満ち足りた安心感はないだろうか。
「排泄の用を足す」うえで、その両者は自分の精神衛生上になんらの差もないのだろうか。
出せば終わりか。
出せればそれでいいのかオマエたちは。
そんな気にもなる。
何でもいいのか、どこでもいいのか、誰でもいいのか。
そういうオトコなのか。
そんな台詞も(全然関係ないけれど)思い浮かぶ。
いずれにしても下世話なことである。
他人の下世話が気になるようになったら、いよいよ下世話であるから、己を省みるのである。
公共のトイレを掃除するのは、そんなちょっとした小宇宙、自省の機会なのである。
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